コクヨ人事直伝!就活準備より大切な、大学生活で得るべき「目的意識」とは?

『さよなら就活対策』

「貴重な大学生活を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない「面接の裏側」を紐解き、これからの大学生活を問い直す、面接官の告白。

今回インタビューしたコクヨ株式会社は、「働く人・学ぶ人の知的活動の進化に資する価値の提供」を提供価値とし、 人生の1/3を占める「学ぶ」「働く」「暮らす」という行為を、より良くしている企業です。文房具を扱う「ステーショナリー事業」の他に、企業等のオフィスや学校施設などの空間を作る「ワークプレイス事業」、学ぶ場・働く場で必要とされる商品の通信販売を行う「通販・小売事業」を展開しています。

今回は、コクヨの新卒採用担当である長濱さんに「就活評価の裏側」「大学生活で意識するべきこと」をリアルにお話いただきました。自分らしいファーストキャリアを描くヒントにしていきましょう!

採用活動のこだわりは“学び”の提供

Q. 就職活動の仕組みが多様化する中で、コクヨの採用活動のこだわりを教えてください。

私たちは、学生さんにとって“学び”となるような採用活動を行っています。昨今、働き方が多様化し、個人のキャリアプランも流動的になっています。だからこそ学生さんが就活を通じて多くの選択肢を知り、主体的にキャリアを設計できるようサポートしたいと考えているからです。

Q. 具体的にどのような“学び”を提供しているのでしょうか?
 

コクヨの公式Instagramでは、会社情報だけでなく就活対策のコンテンツも発信しています。例えば、“ESの書き方” や “やりたいことの見つけ方” など、皆さんが就活を進める中で気になることを若手社員のリアルな就活体験談も交えながら紹介しています。

その他、説明会では、時期に応じて提供する情報を変えています。春から夏のインターンシップ選考が始まる前は、“就活市場の現状”  “求められる能力”など、自分にとっての「働く」を考えるためのきっかけとなるような学びの提供を心がけています。

本格的な就活シーズンが始まる秋から冬にかけては、コクヨの魅力を伝えるとともに、学生さんが企業研究で得た情報を整理し、さらに一歩踏み込んだ自己分析につながるような機会を提供しています。

就活において、選考対策云々も大切ですが、働き方が多様化する昨今においては、どうキャリアを描くかも重要なテーマだと考えています。

採用において重視するのはカルチャーフィット


3つのフィットとは:学生と企業、双方にとって納得感のある採用を実現するための自己分析のフレーム。ハタチのトビラでは、『学生のマイテーマと企業理念が合致するテーマフィット』『学生の価値観と企業の風土が合致するカルチャーフィット』『学生の強みと企業の求める人材要件が合致するスキルフィット』 の3つがフィットすることが最適なマッチングであると考えています。
 

Q. テーマ・カルチャー・スキルの3つのFITの切り口のうち何を大切にしていますか?

特に大切にしているのは、カルチャーフィットですね。「自分ってどういう瞬間にモチベーションを感じているのか」、「誰にどんな価値を届けたいのか」、「これだけは絶対に譲れないこだわり」といった、社会人になってからも大切にしたい価値観を教えてほしいです。

「文房具が好きだから」、「家具やインテリアが好きだから」という理由で来られる学生も多いのですが、実は「商品が好きかどうか」は採用とは直接関係ありません。様々な職種・事業がある中で「どんな風に関われたらワクワク働けるのか」「世の中に多くの商材がある中でなぜあなたがワクワクするのは文房具なのか」というところまで深く考えられると、根底にある自分なりの価値観が見えてくると思っています。

あとはスキルフィットも重視しています。持っている素質・スキルはスタンスに通じる部分もあると思っています。現状に満足せず挑戦し続ける、成長意欲のスタンスがあるかどうかは重視しているポイントですね。

「自由だからこそ必要な、自分でレールを引く力」

Q. コクヨで働く上で、どんな素質を持っている人が活躍できると考えていますか?

自分なりの目標や目的を持った上で、そこに向かって努力して進んでいける人が活躍できると考えています。

コクヨでは働く時間や場所も社員一人ひとりが自由に選択して働ける環境です。チャレンジ制度といった成長するための機会もたくさんある会社ですが、強制されたものはなく、どんな機会を得るかは自由なんです。

任されている部分が多いからこそ、言われたことだけをこなすのではなく、自分自身で決めたゴールに向かって力強く進んでいく力が必要になってきます。

Q. 自由というと魅力的ですが、自由だからこそ自律性が問われるんですね。

そうなんです。私自身、入社前は自由な社風に惹かれていましたが、いざ入社すると自分自身で立っていく精神力や目的意識が必要だと強く痛感しましたね。表面上で「自由っていいですよね」と考えている学生には、自由は意外と難しいということを伝えています。

面接で学生に求める「目的意識」とは?

Q. コクヨで働く上で重視される「目的意識」を、選考の中ではどのように測っているのでしょうか?

面接の中ではいわゆるガクチカと呼ばれるような、「大学生活の中で周囲と協力して課題解決/成果創出を目指した経験」をお聞きし、それをもとに判断しています。

特に一次や最終の個人面接で、「なぜそこに課題を感じたのか」、「課題に対してなぜその施策を打ったのか」とこれまでの経験を深掘りして聞いています。当事者として目的を見失うことなく、一貫性を持って行動できているかに注目していますね。


Q. 「偶発的にはじめた経験・取り組みの中で、目的を見出して行動した」という場合でも評価されるのでしょうか?

もちろんです。 新たな一歩を踏み出すための目的を立てた経験もあると思いますし、取り組みはじめたのは偶発的だったけれど、そこで出会った周りの人や環境を見て「自分はここが課題だと思ったから、こんな目的を立てました」といった経験も大切だと考えています。

経験がしっかり言語化されていると、会社に入ってから何に課題感を感じ、そこに対して周りをどう巻き込みアプローチをして、どんな成長プロセスを歩んでいく人なのかをイメージしやすいですね。

印象に残った人は、「誠実な変態」!?

Q.「目的意識」を持って行動した学生の印象的なエピソードがあれば教えてください。

印象的だったのは、塾講師のアルバイトをしていた学生のエピソードです。その学生は「大学受験の経験を同じように勉強で悩んでいる生徒に伝えて、成長をサポートしたい」という思いから、不登校の生徒を対象とした塾講師のアルバイトを始めたそうです。

生徒の勉強に対するモチベーションの維持やコミュニケーションの難しさなどを感じ「生徒のために、自分ができることは何か?」と図書館で不登校の生徒への指導方法について調べて真剣に向き合ってきたと話してくれました。

目の前のことに対して誠実に向き合い、「自分の学びを世の中の子どもたちに届けるにはどうすべきか」を考える姿勢が、コクヨが掲げている「誠実な変態であれ」という、誠実さを持ちながら自らの興味に従って徹底的に追求する姿勢とマッチしていると感じました。

Q. 追求の姿勢をとても感じられる学生ですね。今お伺いしただけでかなりイメージが湧きました。

塾講師の経験をガクチカで話す学生は多いと思いますが、ありがちなエピソードがダメとかそういうことではありません。どれだけ自分なりの問いを立てられて、そこに向かってアプローチができるかという点で、同じ塾講師というエピソードでも面接官の記憶に残るかが決まると思います。

あとは、背景描写を語るのが上手い学生の話には引き込まれますね。自分の考え方や環境の背景などを詳しく伝えてくれると深掘りしやすく、短い面接時間の中でも学生のことをより深く知ることができますね。

 「ありがちな3つのお見送りパターン」

Q. 反対に、評価しにくいパターンはありますか?

よくありがちなのが、強みを聞かれた時に、「ポータブルスキル」についての回答でとどまってしまうこと。あとはチームで働く姿が想像できない場合や、目標設定が低い場合も残念ながら採用は難しいと感じますね。

①知りたいのはポータブルスキルよりも〇〇

Q. 強みは「ポータブルスキル」ではない方が良いのはなぜですか?

自己PRで「コミュニケーション力」や「課題解決力」などを強みと語る学生は多いのですが、企業が見たいのは、その土台にある価値観・スタンス・素質の部分だからです。「コミュニケーション力」といったポータブルスキルや英語力・AI力などの専門スキルは社会人になっても身につけられます。

だからこそ、それらの力を身につける素質を持っているかが大事になります。行動を起こす上でのモチベーションや熱意、そのエネルギーの源は何かを教えてほしいです。学生だけの経験にとどまらず社会人になってからもその人の根源として深く関わってきます。

出会った学生にも「スキルをピラミッドで見たときに本当に大切なのは、一番下のスタンスや価値観の部分だよ」と伝えることを意識しています。選考の中で学生自身が気づいてない価値観やスタンスを言語化するサポートができれば、採用担当としても嬉しいですね。

チームで活躍する姿が想像できるか?

Q. 2つ目のお見送り「チームで働く姿が想像できない」とは具体的にどういうことですか?

二次選考のグループワークでは自己開示力や協調性を見ています。まれに、自分の意見を通すために自己中心的になってしまう学生がいますが、要注意です。個性を出すのは全く問題ありませんが、自分の意見をメンバーにどう理解してもらうか、どこまで思いを言語化して伝えられるかを考えてほしいと思います。

価値を届けるお客様に対して、コクヨの商品やサービスをどれだけ分かりやすく伝えられるか、社会人になってからも必要不可欠なスキルだと考えています。

Q. GWでアウトプットの質がうまくいかなくても、ポテンシャルがあるなら採用しますか?

もちろん、ポテンシャルを見て採用します。グループワークのアウトプットの質はメンバーとの相性にも左右されるので「うまく力を発揮できなかった」ということはあるとは思います。

最初から最後までずっといい動きをしていなくても「ところどころ本質的な発言をしている」、「前に出るのはあまり得意ではなさそうだが、フォローアップ力が高い」というように評価できる部分をみています。

③目標設定のハードルが低い

Q. 3点目のお見送りパターン「目標設定のハードルが低い」とのことですが、何か基準はあるのでしょうか?

「もともと設定されていた目的や課題」に対して「こういうアプローチをしました!」のパターンはお見送りになりやすいと思います。解決へのアプローチ方法はアピールしているけれど、目的は与えられたもので終わってしまっている場合ですね。

反対に、ゼミで地方創生といったテーマ設定は与えられたものだけれども、それに対して自分なりの課題感を持ち、自分の中で新たに目標を設定して答えを見つけ出そうとしたエピソードには自己成長に対する意欲やチャレンジ精神を感じることもあります。

Q. 自分なりの目的意識があることと、課題解決への意欲の高さが大事ということですね。

そうですね。プロセスが評価されるからという理由で、アプローチ方法に焦点を当てる学生は多いですが、「もともとゼミで掲げているテーマに沿って、自分はこういうことをしたんです」だと、+αがみえにくく、もったいないです。

会社に入ってからも、与えられた課題に対して100点で返すことは多分できる方だと思うのですが、100点を超える自分なりの個性や、プラスの付加価値を見出せる人ではないと感じてしまうので、見送りになるケースが多いかと思います。

もちろん全国優勝といった大きな目標や結果を求めているわけではありません。あくまでも自分自身が置かれた環境の中で、どれだけ高いハードルを設定するかを重視しています。

ハタチ世代へのメッセージ

 Q. 最後に、学生たちにアドバイスをお願いします。

自分の価値観を探るヒントは、学生生活の中にこそたくさん転がっていると思います。
就活が始まってから、働くことから逆算して自分なりの価値観を考える学生が多いですが、部活やサークル、アルバイトなど毎日がいろんな経験であふれている大学生活だからこそ、「自分はこんな瞬間にモチベーションを感じられているな」とか、「こんな出来事にすごくやりがいを感じたな」とか、今過ごしている大学生活を見つめてほしいです。

あとは、一つの目標を立ててそのゴールに向かって一生懸命にやりきる経験もぜひしてほしいですね。目標に向き合うことで見えてくる新たな自分や、周りの人からの学びなど成長の糧がたくさんあると思います。1つのことに夢中になれる時間がある大学生活だからこそ、そういった経験を大切にしてほしいなと思います。

編集後記

今回のインタビューを通して、長濱さんは、「自ら問いを立て、自分なりのレールを引いていく姿勢」の大切さを伝えてくださいました。

学生時代に「どんな経験をしてきたか」も重要ですが、それ以上に、「なぜその問いを立てたのか?なぜ課題だと感じたのか?」を言語化することで、その根底にあるあなただけの価値観が見えてくるはずです。

アルバイトやサークルなど日々の経験を振り返ってみましょう。自分の価値観や強みを社会でどのように発揮していきたいか、考えるきっかけにしてくださいね。これを機会に、自分らしいファーストキャリアを描いていきましょう。