『さよなら、就活対策』
「貴重な4年間を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない 「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白"
昨今、2就活ルールを廃止することが決まり、「就活はどう変わるのか」と不安に思う就活生も増えていることでしょう。そんな中、今回インタビューしたIT企業ガイアックスは、就活ルールによらない通年採用の新卒採用活動を行っています。
今回は、多くの起業家を輩出しているガイアックスの人事が、どんな視点で採用活動を行っているのか、具体的にどのように評価しているのか、また採用から配属のプロセスなど赤裸々にお話していただきました。
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就活ルール廃止後の“通年採用”とは
Q. 就活の仕組みも変化する中、採用において何を大切にしていますか?
会社紹介にもあるようにガイアックスってちょっと変わっていて、人と人がつながることで社会課題を解決することを目指して、社会を変えていける人をどんどん輩出していきたいと思っている会社です。実際に、新卒で入社した人の退職理由の6割が起業なんです。
ですので、事業を作る意欲と力を持った人を採用ターゲットとしています。
その中で新卒に求めているのは、「0→1」をつくっていけるかどうかです。自分が使命感をもつ課題に対して世の中を変えていけるような事業をつくる人や、そういった仕組みをつくりたい人を集めることを目的として採用しています。
本人自身がガイアックスという環境をいかして何をしたいかが重要になってきます。
運に左右される配属を壊す制度とは
Q. 新卒採用で採用した方の1年目の配置やそのプロセスはどうなっているのですか?
配属に関しては、以下の3つのパターンがあります。
1,新規事業をつくっていく部門への配属
2,既存事業を動かす部門への配属
3,管理部門への配属
プロセスに関しては、社内に部署が複数あるのですが、内定が出た段階である程度目星はついています。
面接時から本人の「ライフワーク」「ライフプラン」「ミッション」は何かを重要視していて、解決したい想いや能力を持っているのかを見極めているからです。実際には、内定者研修から内定式後までの期間で配属を決めていきます。
Q.内定者期間はどんな施策を実施していますか?
内定者研修期間は、多くの会社で実施する“企業を知る期間”ではなく、“自分を知る・強みを知るための期間”として、「仕事でどう立ち振る舞うことが、一番成果を出せるのか」を分析してもらいます。
自分の人生を振り返り、「今後、自分がどうしていきたいのか」「その手段としてなぜガイアックスを選んだのか」「ガイアックスでは何を身につけ、何に挑戦したいのか」を考え、内定式でプレゼンしてもらいます。
もちろん社内の人がみていて、質疑応答をして、その場で部署・役員から声がかかることもあります。ある意味ドラフトっぽい形ですね。
内定式後に、配属面談して上で実際には、会社希望「50%〜60%」対 本人希望「40%〜50%」くらいの考慮材料で配属が決定します。
マッチの理由は様々ですが、お互いにとってベストな配属を心がけています。理由のない配属はありません。
通年採用で学生と出会うタイミング
Q. 既存の採用スケジュールに沿わない中で、学生はいつ選考受けるのですか?
ガイアックスでは、採用の時期を定めることはなく、選考を受ける時期、入社する時期を自由に選べるようにしています。
元々の採用はスカウトや人材紹介が8割、その他が2割だったんですが、今は約8割が直接の応募、社員からの紹介になってきています。
Q. なぜ、そのような採用になったのでしょうか?
本人が4年間の経験デザインを自ら行い、やり切れる人材を採用したいという想いから、スケジュールを自由にしています。
「就活ルールが決まっているから、自分の大学生活もそれに沿って動く」という人は、入社してからも「同僚がこのやり方をしているから、同じやり方を選択する」と思うんですよね。
そもそも「学生起業」「留学」「休学しての課外活動」「部活動」等々、就活ルールで定められたスケジュールでの就職活動が難しい学生も一定数存在しますしね…
中途採用ではなく新卒採用をする意味
Q. このような採用戦略の中で、あえて中途採用ではなく、新卒採用に拘る意味を教えて下さい。
結論から言うと、採用を定義したとき、結果的に新卒採用が当てはまりやすかったからです。これは独自で考案したものですが、以下の3つの条件がそろった人を正社員として“採用すること”だと考えています。
2,タイミングフィット=その人が入社しうるタイミングなのかどうか(週5、8時間リソースがあいているか)
3,スキルフィット=ガイアックスが求めているスキルをもっているかどうか(将来やりたいことがガイアックスでやれるか)
大学生をメインターゲットとしているポテンシャル採用では、学生だろうが第二新卒だろうが変わらないんです。実際、30歳以下ならだれでもエントリーできるようになっています。
大切なのは、世の中に向かって当事者意識をもって行動していける人なのかどうかということです。
この3つの中で一斉に全員卒業するから①③が合う人がいれば、新卒は②のタイミングが合いやすいんです。そして、より若いほうが現代の課題に敏感、常識にとらわれていないという強みがあります。ガイアックスでの自由な環境をいかしていく人として新卒採用が結果的に当てはまりやすいということが言えると思います。
ちなみに、ガイアックス単体で成果を出すことに拘っていません。「OB・OG」「関係者」の方々とガイアックスが目指していることを達成できればと思っているので、3つがフィットしなくても一緒にやっていける方はいると思っていますし、実際に異なる採用枠もあります。
面接における評価ポイント
Q. 「漠然と起業したい」というエントリーも多そうですが…面接において、学生をどのように評価していますか?
面接で語る”やりたいことへの想い”が、「本当にそうなのか?」という点においては、既にその想いに関連するアクションを起こしているかどうかをみています。
仮に、本当にミッションレベルでそれをやりたいと思っているのであれば、「社会人になってからやろう!」という人は少ないと思います。
例えば、本気でサッカー選手になりたい人が、「中学生になったらサッカーを始めよう」というよりは、家で勝手にリフティングをやっていると思うんですよね。という意味で、成果の有無はどうであれ、行動までしているのかどうかは結構気にしています。
Q. “スキルフィット”という話がありましたが、新卒でのスキルはどこまで見ていますか?
特定の分野の能力は求めていません。
その学生が、環境に依存せずに、どこまで頭を使って考え行動できるか、スタンスの部分を見ています。
スキルは入社後でも補填できると考えているからです。
Q. 面接の中で適切なスタンスがあるかはどう見極めを?
過去の経験からどんな環境で、どんなことを考え、どういう動き方をしているのか、「入社後の再現性」をイメージしながら分析しています。
そして、その経験に関しての実績の大小は関係ありません。
「部員が9名しかいない中で、野球部をつくることから始めて地方予選2回戦目で負けてしまった人」と、「甲子園に毎年出場している高校に入って勝ち進んでいった人」と比べたとき、その実績は関係なく、その環境において発揮した価値は何なのかということをみています。
環境の中で何を考えて、どういう行動をしてきたのかというのは、ガイアックスに入ってからも再現されることだと思います。
評価したガクチカ 起業編
Q. 具体的に、過去どのような学生の経験を評価したのですか?
19卒新卒1年目で、既に会社をつくっている子がいるのですが、彼のエピソードは刺さりましたね…
ある国では、制度が整っておらず・・・「入院=借金地獄」という現実を目の当たりにもしたようです。その中で彼が普通の人とは違うのは、問題意識と向き合い実際に行動を起こしているところです。
「入院費用をまかなう仕組みを作れないか」を考えて、入院中にできる内職としてアクセサリー作りなどの機会を創り、仕事を与える活動をしました。
その彼は、そんな経験をきっかけに、より多くの人たちに機会提供ができるようにしたいと思ってガイアックスの入社を決めました。
評価した理由としては“時間と体力しか持っていない状態”で、自分なりの判断と行動ができているからです。そんな彼が、資本力があり、自由度も高く、使えるリソースが多いガイアックスの環境に入れば、同じ行動、同じ判断をしたときにはもっともっと大きなことができますよね。
評価したガクチカ アルバイト編
Q. 起業のガクチカはハードルが高いですね…アルバイトのような経験でも評価した事例はありますか?
20卒内定者で飲食店のアルバイトがガクチカ(学生時代頑張った経験)という学生もいました。
その状況を目の当たりにして、彼女は「もっとこの店舗をよくしたい」という想いを抱き、社員とアルバイトの悩みをヒアリングしました。
その結果から「頑張っても給料が上がっていない…」「評価の不一致に不満」を抱いている人が多くいました。そこで、社員さんにお願いして時給アップの評価基準を明示してもらい、不満を抱いていたアルバイトスタッフ一人ひとりに「ここの要素が足りていないから、もっとここ頑張ってみよう!」と声をかけていったそうです。
その他にも、売上のネックになっている集客部分を「ビラを作成してスタッフで協力して配る」等の行動を自ら先頭に立って起こしたようです。結果的に、社員やアルバイトスタッフ全員のモチベーションや業績にも貢献したという話です。
「飲食店のアルバイト経験でガイアックスは入れるのか?」と思われるかもしれないのですが、彼女のスタンスは、社会課題に向き合って働くガイアックスという環境に合っているなと感じました。
Q. そのバイト経験をどう評価したのですか?
2つの力を評価しました。1つは「自分以外である他者の問題を“ジブンゴト化”する力」です。店舗の業績の良し悪しやモチベーションの有無によって「時給」は変わらない中でも、社員の方が困っている事象を解決したいという想いから、課題を明確にして行動を起こしている点が素晴らしいですね。
2つめは「目的達成に向けて必要なことを自分で判断し、試してみることができる力」です。目的達成するためには手段は選ばないということが素晴らしですよね。
彼女のエピソードでいうと「マネジメント経験があるわけではないけれど、年上の先輩に寄り添ってみる」「デザインのスキルはないけれど、自分でビラをつくって配ってみる」ということを自分で判断し行動しています。
特にベンチャー企業で働くとなると、目的達成のために自分で判断して行動するシチュエーションが圧倒的に多いです。そんな環境にも適応できる方だなと思いました。
ーどんな環境でも力を発揮できそうな方ですね!
ちなみに内定後、PCの使い方すら怪しい彼女は、内定後1か月で自らITパスポートを受けてくれています。
スタンスさえ備わっていれば、スキルは後からついてくるなと思っています。
志望動機に変わる評価ポイントとは
Q. 「志望動機」はどのように評価していますか?
志望動機は、ES(エントリーシート)にもありませんし、評価軸にもなり得ません。ESの質問は「面談したい理由」のみです。
最初にも触れたように新卒採用の最大の目的は「会社の業績をあげること」 「IPOできる事業を輩出していくこと」が目的です。
面接では「入社後活躍できるかどうかを考えたときに必要ないことは気にしなくていい」と思っています。
Q. では、カルチャーフィットはどのような観点で評価するのか教えて下さい
ガイアックスのマネジメントスタイル、コミュニケーションスタイルが合うかどうかですね。例えば、幾つか例をあげると以下のような観点です。
・自己開示をして協力を得る、周りを巻き込むことが求められる
(例:社内外の境目が曖昧な環境を武器にすることが必要)
・自分の成果・価値を表現できるかが求められる
(例:目標設定は自分でして、四半期ごとの自分の給与交渉を自分ですることが必要)
あくまで、志望動機やガイアックスのことを詳しく知っているかは、重視しません。
ちなみに、先程のアルバイト経験を語ってくれた学生は、「人と人をつなげるという価値観」に共感し、このガイアックスという環境が、自分のスタンスとフィットすると感じたので入社を決めてくれたようです。
ハタチ世代へのアドバイス
Q.最後に、社会へ出る前の大学生1年生、大学2年生へアドバイスをお願い致します!
自分で決める経験をとにかく積むことです。それを続けていくと、就活、転職、社内での異動があったときも自分の判断軸ができると思うからです。
何をやるかは関係ないと思っていて、能力がつく環境にいようが、好きな団体にいようが、自分で判断しないと意味がない。
自分で決める経験と、そこにおける目的をもつことの2つを繰り返していくことが大切だと思います。
編集後記
働き方が多様化する中で、新卒一括採用という文化が形骸化し、ガイアックスさんのような採用スタイルがスタンダードになる可能性は0ではありません。
ただ、就活ルールがどう変わっても「自分で考え判断し、行動を起こす経験値」が評価の指標になるということは変わらないと思います。
これを機に、就活の時期にキャリアを考えるという流れに逆らって、将来への一歩踏み出す挑戦を考えてみてはいかがでしょうか?
ぜひ、自分らしいキャリアをつくるための新たな経験を!