MENU
『さよなら就活対策』
「貴重な4年間を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない 「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白" 。今回は誰もが知る大手ITベンダー、富士通株式会社の人材採用センター マネージャーである片庭さんと、同じくマネージャーの天谷さんにインタビューしました。
富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスに掲げ、人々を取り巻く組織と世界を変革するテクノロジーとビジネスソリューションのグローバルリーダーで、主にサービスソリューション提供しています。
実は今、常識を覆すような新しい採用システムに挑戦中!そのキーワードは「ジョブ型採用」。入社時期も初任給制度も撤廃し、一人ひとりの個性と能力を重視した採用を行うというのです。ジョブ型採用を導入した背景や、求める人物像、そして大学生活でやっておくべきことなど、就活を控えた学生必見の内容を伺いました。
ジョブ型採用で富士通の新卒採用はどう変わる?
Q. 今年(2024年)6月に新卒採用市場に非常にインパクトのあるプレスリリースを出されましたが、改めて富士通の新卒採用におけるこだわりを教えてください。
天谷さん:プレスリリースを出す前から、弊社では幹部社員および一般社員において、すでに「ジョブ型人材マネジメント」を導入していたのですが、それを新卒入社者にも展開していくことになりました。そのため、やはりこだわりは「ジョブ型採用」になります。
しかし逆に言えば、新卒という言葉にこだわりを持たなくなったとも言うことができます。ジョブ型人材マネジメントなので、新卒や中途にこだわらず、ジョブディスクリプションにマッチする方にご入社いただければと考えています。
片庭さん:このような採用形態へシフトするためには、ジョブに対する理解をしっかりと深めていただくことが重要になります。そのための1つの取り組みとして、1~6か月間に及ぶ長期の有償型インターンシップを拡充し、学生の皆さんに当社の各領域におけるスペシャリストと共に実ビジネスに挑戦いただきます。こういった経験を通じて当社の仕事を理解いただくとともに、当社のカルチャーや一緒に仕事をするメンバーの雰囲気などをつかんでいただけると思います。もちろん在学中は学業・研究に専念したい方もいらっしゃると思いますので、年間を通じてこのような挑戦の機会を用意するつもりです。
Q. ジョブ型採用へのシフトにあたって、選考フローも変わりますか?
片庭さん:選考フローは職種によって異なりますが、基本的には書類選考と複数回の面接が行われます。特徴的なのは、従来の人事部主導の選考から、より職場の人が権限を持つ形に変わってきていることですね。
天谷さん:一言でいうと、採用したい人を自分たちで選ぶという考え方です。やはり、“ジョブ”を起点にしたときに、その“ジョブ”の内容を一番理解しているのは職場の人なので、職場と人事の二人三脚で採用に取り組んでいます。
富士通のパーパスに共感できる? 採用における最重要ポイント
Q. 評価ポイントも教えてください。
片庭さん:評価のポイントは大きく分けて2つです。主に職場の面接官は「ジョブへの適合性」を、人事部門は「人物のポテンシャル」を見ます。人事側では、富士通が大切にしている価値観である『挑戦』『信頼』『共感』に紐づく部分(チャレンジ精神、成長し続けていく姿勢、コミュニケーション能力など)を細かく見ています。
Q. 評価において最も重視されているのは何ですか?
天谷さん:最も重視しているのは、富士通のパーパスへの共感ですね。富士通は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスに掲げています。どんなに優秀な方でも、富士通のパーパスに共感いただけないと厳しいですね。例えば、単に富士通という環境を使って自分のスキルを磨きたいという方だと、一緒に仕事をしていくベクトルが合わないと感じます。
片庭さん:単純に「人を喜ばせたい」もいいんですが、この仕事をやった先に、どういうことを世の中にもたらしたいのか。「誰かのために」という視点は持っていてほしいですね。富士通は世の中に信頼をもたらすということをパーパスで掲げているので、そこへの共感は重要です。
自分の人生のハンドルを握れているか?
Q.必ず聞く質問ってありますか?
片庭さん:一見シンプルな普通の質問になってしまいますが、
- 大学や学部をどうやって選んだのか?
- アルバイトをどうやって選んだのか?
- 就活で業界を選ぶときにどうやって選んだのか?
といった、その人の思考が見えてくる部分は必ず聞くようにしています。やはり、選択にいたる過程にこそ、その人の本質が表れると考えており、どんな価値観や考え方をもっている人なのかを見極めるのに、このような質問をすることが多いですね。
Q. そのような質問を通して、どんな方だと評価しているのですか?
片庭さん:端的に言えば「自分の人生のハンドルを握れている人」ですね。一方、行き当たりばったりの選択でも良いと思っています。ただ、自らの選択に責任を持ち、そこでの経験を前向きに捉え学びにつなげられるということが大切だと思っています。
変化の激しい今の時代において、しっかり意思を持って、自ら考えて動ける人を富士通では求めています。
Q. 天谷さんはいかがですか?
天谷さん:私はよく「あなたが面接官だったら、自分を採用しますか?」という質問をします。答えはYESでもNOでもよくて、そのどちらかの答えに対して、「どうして?」と問うた時に、どんな回答をするかに注目していますね。
質問の意図としては人間性を知りたいというのがあるのですが、準備しにくい質問だからこそ、応募者の客観的な自己分析、長所・短所などを色々深掘れるのでお聞きすることが多いです。そこから、片庭さんもお話されていたような、その人の価値観や考え方、主体性なども含めた富士通との相性を見極めていきます。
印象に残っているエピソードとよくあるお見送りパターン
Q. 過去の面接で印象の残っているエピソードはありますか?
片庭さん:色々あるのですが、過去の入院経験から富士通の医療製品に関心を持ち、自分がその時にお世話になった分恩返ししたい、という強い意志を持った学生がいて、「自分の経験を前向きに捉え、社会貢献につなげようとする姿勢」が非常に伝わってきたので印象に残っています。
天谷さん:私は、ある理系の学生さんのことをよく覚えています。最初緊張のあまり用意した原稿を読み上げていたんです。でも「もう原稿はしまって、自分の言葉で話してほしい」とお願いしたら、少し時間はかかりましたが、徐々に自分の言葉で語り始めて。最後には生きた対話ができるようになりました。その素直さや努力しようとする姿勢に惹かれましたね。
Q. 反対に、よくあるお見送りパターンもあれば教えてください。
天谷さん:たまにいらっしゃるのですが、オンライン面接で遅れて入室してきたにも関わらずお詫びも何もない方は、一緒に働く人に対してもこうなんだろうなと思うので難しいですね。
片庭さん:あとは、準備してきた話題に全部引き戻そうとするパターンですね。何を聞いても、全てその話題につなげてお話しようとする方が時々いるのですが、ちょっと一貫性という言葉を履き違えているなと思います。
ハタチ世代へのメッセージ
Q. 最後に、学生に向けて大学生活のアドバイスをお願いします。
天谷さん:大学生は何と言っても時間があります。だからこそ、その時間をぜひ豊かに使ってほしいと思います。旅行でもいいし、アルバイトでもいいし、オンラインであらゆるもの知っていくこととかでもいい。とにかく、様々な経験をして自分の視野を広げてほしいですね。また色々な経験、とくに困難経験をしておくと、未来において同じような状況になったときに「あの時も乗り越えられたから大丈夫」というように思えるようになるので、若いうちに、たくさんの経験をしておいてほしいなと思います。
片庭さん:様々な経験をして視野を広げてほしい、という点では天谷さんと一緒です。その時に、利用するサービスや製品について、良い点、改善点などを意識してみることをお勧めしたいです。というのも、就職したら誰しも必ず何かしらのサービスを提供する側になるからです。こうすることで、将来どの業界で働くことになっても役立つ視点が養われると思いますよ。
編集後記
富士通の片庭さんと天谷さんのお話を伺い、“新卒”という言葉にとらわれない、ジョブ型採用の裏側を伺うことができました。学生の皆さんにとっても、新しい採用の在り方は興味深かったのではないでしょうか?ただし、完全に「ジョブへの適合性」のみで評価しているのではなく、これまでの総合職採用のように個性やポテンシャルを評価する部分もありました。
「自分の人生のハンドルを握れている人」という言葉があったように、キャリアは自分で考えて自分で決めていくものです。どんな事業に携わりたいか?どんな風に働きたいか?仕事を通して、自分はどのように成長していきたいか?ぜひ社会理解と自己理解を深めながら、納得度の高い自分のキャリアを築いていってくださいね。