ハタチのトビラ 自分らしいファーストキャリアに出会う場所

キーワードは「一貫性」?パナソニック人事が語る、一緒に働きたい学生とは?

さよなら就活対策

「貴重な大学生活を“就活対策”で、消耗していませんか?」

誰も教えてくれない「面接の裏側」を紐解き、これからの大学生活を問い直す、面接官の告白。

今回取材したのは、『幸せの、チカラに。』をブランドスローガンに掲げ、持株会社であるパナソニック ホールディングス株式会社と複数の事業会社で構成されるパナソニックグループ。同社は、「人づくり」を重視し、多様な制度やサポート体制で社員の挑戦と成長を後押ししています。

パナソニックグループでは、入社前に事業会社と職種を決定する「初期配属確約型採用」生成AIを用いた採用に関する情報提供、実際の職場に入り込んで社員と一緒に働く「リアル」な仕事体験としてのインターンシップ大学低年次向けのキャリア教育など、学生の自律的なキャリア形成を支援すべく、就活年次にとどまらない多岐にわたる活動を展開しています。

本日は、技術系採用の責任者の櫻井修治さんと、インターンシップ、キャリア教育の責任者の渡邉尚美さんに、「どう就活と向き合うべきか?」「大学生活で行動するべきことは?」をリアルにお話しいただきました。

自分らしいファーストキャリアを描くヒントにしていきましょう!

 

初期配属確約型採用の裏側

 Q. パナソニックグループの新卒採用でのこだわりは何ですか?

渡邉さん:「パナソニック キャリアデザインプログラム」として、低年次からの一連のタッチポイントのなかで「はたらく」ことを考える多様なプログラムの提供を行っており、就活年次の学生だけではなく、低年次向けのキャリア教育プログラムにも力を入れています。創業者・松下幸之助の言葉である「ものをつくる前に、人をつくる」を大切にしている会社だからこそ、学生が年次にとらわれず、一人ひとりに適したタイミングで将来について考えるよう支援し、納得してファーストキャリアを選択いただきたいという思いからです。

Q.ハタチのトビラも同じ想いです…!就活のフェーズでのこだわりはありますか?

櫻井さん:そうですね、就活や選考においてのこだわりでいうと、「シンプル」「オープン」「学生フェア」という3つのことを大切にしています。

 

Q. それぞれの言葉の意味を詳しく教えていただけますか?

櫻井さん:「シンプル」とは、学生がキャリアを選択するプロセスがシンプルになるように工夫しているという意味です。複数の会社から構成されるパナソニックグループでは、「事業会社×職種」で約150のキャリアの選択肢があります。その中で、採用においては配属先を入社後に決める「一括採用」ではなく、入社前に事業会社と職種を決める「初期配属確約型採用」を行っているため、どんな事業会社・職種がグループ内にあるかを分かりやすく伝える工夫をしています。

また、生成AIを活用した事業会社・職種をレコメンドするような情報提供の仕組みづくりにも力を入れています。

渡邉さん:「オープン」とは、パナソニックグループではたらくことに関するリアルな情報を届けることにこだわっています。はたらくイメージを持てる絶好の機会であるインターンシップを通じ、自分なりのキャリア観を醸成してほしいという思いで、就業体験の機会を積極的に提供し、実際の職場に入り込んでいただく双方向のコミュニケーションを大切にしています。24年夏も約1,000名の学生をインターンシップで受け入れましたが、これは日本最大級の規模だと思います。

櫻井さん:3つ目の「学生フェア」の意味としては、あくまで対等な立場であるということを意識しています。「学生ファースト」というと「学生=お客様」といったニュアンスにもなりかねないため、企業が学生を見極めるのではなく、互いに見極め、見極められる関係という思いで、あくまで対等な立場で向き合うことを大切にしています。

 

選考フローと判断ポイント

Q. 低年次から学生のキャリアと向き合った先にある、選考フローにおけるこだわりは?

渡邉さん: 就活生向けの会社紹介スライドにおいても、いきなりパナソニックグループの紹介から始めるのではなく、「あなたにとって、はたらくって何ですか?」というように、学生にまずは「はたらく」ことを問いかけています。面接では、これまでの学生生活や「はたらく」ことを通じてやりたいことなどについて、飾らず自分らしく、私たち社員にお伝えいただけるよう、学生一人ひとりの想いをしっかりと受け止めたい、相互理解を深めたいという姿勢で面接に臨んでいます。

具体的な選考フローとして、事務系は「グループ合同選考後に、事業会社毎に複数回の面接」、技術系は「事業会社毎に複数回の面接」を設けています。

選考初期の段階においては、パナソニックグループの経営基本方針の実践を目指すための行動指針に照らし「自社のカルチャーにフィットするか?」その後の段階においては「スキルがフィットするか?(理系であれば研究テーマに対する取り組み姿勢や技術的な専門性等)」を確認しています。

 

Q. 判断ポイントをもう少し具体的に教えていただけますか? 

櫻井さん:いくつかポイントはあるのですが、「一貫性」「協働性」「経営理念と価値観の一致」は特に大切にしています。

「一貫性」については、これまでの経験の中で適切な目的設定・課題設定・アクションの実行に筋が通っているかを確認しています。また、そういった筋の通った行動を他の経験の中でも実行できているかも重要です。経験の大小問わず、筋の通った行動が積み重ねられていると、入社後の再現性が高いと考えられ、活躍イメージが非常に湧きやすいですね。

渡邉さん:パナソニックグループの採用ブランドスローガンは『誰かの幸せのために、まっすぐはたらく。』。パナソニックグループでは、社会や誰かの幸せのチカラになりたいという志を持った社員が多く、また、その志の実現に向けて仲間を巻き込みながら自ら考え行動し続けられる人材が活躍しています。加えて、仕事の特性としても、部門・職種を超えた多くの関係者との協働が求められるため、「協働性」は特に大切にしています。

 

Q. 経営理念と価値観の一致は、志望動機を確認するということですか?

渡邉さん: 志望動機は、正直、会社理解が深まらない状況で回答いただくのは難しいと思っています。「志望動機はなんですか?」という問いよりも、先ほども申し上げた「そもそも、あなたにとって、はたらくとはどういうことですか?」という問いを起点に、学生本人が大切にしたい価値観とパナソニックグループが大事にしている経営理念が重なり合うかどうかという根底の部分を確かめたいと思いますし、学生さん自身にも確かめていただき、互いにミスマッチになることを避けたいと思っています。

Q. ちなみに、過去の面接の中で、どんな学生が印象に残っていますか?

渡邉さん: 幼少期にロボットに興味を持ち、その後の中学・高校・大学・大学院まで一貫して「ロボット」を探求し続けた学生さんが印象に残っています。「人と共創できるロボットを作りたい」という想いと過去の行動が一致しており、人生レベルでの一貫性を感じましたね。

Q. 反対に、判断が難しいケースについて教えてください。

櫻井さん:非常にもったいないのですが、 “判断し難い”という理由でのお見送りは案外多いです。前提として誤解しないでいただきたいのは、面接におけるマッチングは、その学生の性格の良し悪しではなく、学生と企業の考え方・価値観が合致するか否かで決まるものだということです。

その中で、判断が難しいケースは学生の考え方・価値観が自社に合っているか“判断し難い”場合が多いです。限られた時間の中で「発言内容の一貫性が見えにくい」場合は、その学生の考え方・価値観を捉えるのが難しいですよね。

正直面接を担当する私も、お互いに面接の30分で決められるのか…?と思っています。究極は、「面接する必要がなくなる世界」を目指していきたいです。冒頭でお伝えした低年次向けのキャリア教育プログラムに対する思いにも通ずるところなのですが、大学生活と就活とファーストキャリアがもっとシームレスになるような社会になればいいなと思っています。

 

自己分析には注意を

Q. 改めて、面接前の自己分析の重要性を感じましたが、自己分析のポイントはありますか?

櫻井さん:自己分析でいうと、そもそも過度な自己分析には注意した方がいいと思っています。自己分析で過度に自分と向き合った結果、「空回りしている」もしくは「自信を持ち過ぎている」学生も少なくないように感じます。

私たちとしては「自分のことが分からなくて当たり前」だと考えています。色々な社会人と会って、色々な会社を見て、その中で少しでも心が動くものがあればそれを大事にしていただきたいです。自分だけを見るのではなく、とりあえず色々と動いて情報を集めてみて、それらしい方向性を信じて行動してみることが大切です。

渡邉さん:実際、強みは社会人として働くなかでさらに磨かれるものでもあるし、価値観も環境や経験によって変化していくこともあると思います。「私の強みは○○で、〇〇という価値観だから、絶対に○○!」とはじめから決めてかかると、将来の選択肢や可能性が狭くなってしまい、納得のいくキャリア選択も難しくなってしまうかと思います。

 

ハタチへのメッセージ

Q.最後に、今からできるファーストキャリアへの準備・大学生活でやるべきことは何でしょうか?

櫻井さん:大学のアセットを使い倒してください!授業・教員・ゼミの仲間・キャリアセンターの職員・図書館etc…実は大学の中に活用できるものってめちゃくちゃたくさんあるんですよ。今は気が付かないかもしれないけれど、大学の中にある無料で使える宝物に目を向けてみると良いと思います。

渡邉さん:「就活の準備はしなくていい」と伝えたいです。とにかく、「まずは目の前のことに一生懸命取り組んでみる」「よくわからないことにも恐れず一旦触れてみる」「そこから何か興味を惹かれるものがあればとことん探究してみる」。こうしたことから自分が大切にしたい価値観や将来のビジョンにつながるものが見えてくるかもしれません。

自分はやりたいことがないと不安に感じている人もいるかもしれませんが、まずは目の前のことに打ち込んでみてください。WILL(やりたいこと)は後からついてきます。何かをやり切った経験の中で見えてきたWILLから、選択肢を広げてみることも重要です。選択肢を知らなかったら選びようがない。学生生活の中で、自分の将来の可能性を広げるような行動を積極的にとってみてください!

 

編集後記

「ものを作る前に、人を作る」という理念のもと、学生一人ひとりのキャリアと真摯に向き合う姿勢が非常に印象的でした。

パナソニックグループの採用において、「一貫性」「協働性」「経営理念と価値観の一致」を重視している点も、学生の個性と可能性を尊重する姿勢の表れなのだろうなと感じた次第です。

就活突破のために、無理に自分を飾る必要はない。型にはまった回答や自己PRではなく、あなた自身の経験や価値観を大切にしてください。

等身大の自分でこれまでの経験を振り返り、自分の言葉で語ることで、きっとあなたにぴったりの会社が見つかるはずです。