『さよなら、就活対策』
「貴重な4年間を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない 「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白"
今回インタビューした(株)ワコールは、「世の女性に美しくなって貰う事によって広く社会に寄与する事」をミッションに掲げる、女性用のインナーウェアを中心に展開する日本の大手下着メーカーです。
“美”に感心のある就活生を中心に人気が高いワコールの面接において、何が求められるのか?学生時代の時間の使い方はどうあるべきか?
大学生活やこれからの就活を考えるにあたっての参考にしていただければと思います。
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大手メーカーワコールが求める人材とは?
Q. ワコールで求められている人材ってどんな人ですか?
「自律革新型人材」を掲げていますが、端的に申し上げると“主体的にチャレンジを続け自らの成長にコミットし、新たな価値創造ができる人材”を求めています。
イノベーション戦略として、AIを活用した商品・サービスの展開、戦略に注力し始めている中で、従来のワコールっぽいと言われる人物像の採用から、AI・理系・グローバル思考の強い人材の採用を意識しつつありますが、一律で「こういう人材がほしい!」という人材要件があるわけではありません。
ダイバーシティ&インクルージョンを重視する中、個人が持っている個性、強み、思いを引き出すことが採用活動のベースになっています。
面接では、最大3名の集団面接から個人面接まで、1度の面接に時間をかけて一人ひとりと向き合うことを心がけています。また、自身の強みや困難にどう向き合ってきたかについて掘り下げる質問を丁寧に行っています。
これからのインターンのあり方とは?
Q. 採用の入り口として、インターンは実施していますか?
今期は、コロナウイルスの影響もあって3月実施予定だったインターンシップを中止しました。昨年までは、会社を広く知ってもらうことを目的としたインターンシップ実施していました。
内容としては1日の中で説明会的な要素だけではなく、能動的なワークに参加してもらうものです。採用の優位性には全く関係はありません。
ただ、今後の方針はどうなっていくか分からないですね・・・インターンの位置づけは変わっていく可能性もあります。
個人的な見解としては、新卒でインターンを実施するのであれば、本人と会社がより深く知り合える採用直結も想定した長期インターンであれば、より価値があるのかなと思ったりもします。
エントリーシートに+αの動画選考
Q. 人気のある御社では多くのエントリーがあると思いますが、エントリーシートはどのような評価をしておりますか?
2021年度の採用からエントリーシートと1分間の動画を書類選考に課しています。
ESでは、大きく2つのことを聞いています。
1つめは、自社への熱意(企業研究の度合い)と、入社後、経営理念を基にワコールで何をチャレンジしたいかが明確になっているかどうかという点です。
2つめは、学生時代にどんなことを経験して、そこからどんな学びがあったのかを聞いています。
2つの要点が1つのストーリーとして組み立てられていると、合格ラインに乗ってくる確率が高いです。つまり、学生時代の原体験と志望する理由がリンクしているか、整合性がとれているかが重要になってきます。
Q. 自己PR動画はどのように評価をしていますか?
今年から初めて実施する動画選考の中では、アピール力と自己表現力を見ています。
具体的には、1分の中で「わかりやすく伝えられているか」「ポイントを絞っているか」「論理的に話が展開されているか」という点をみています。加えて“話し方”や“品”、“言葉遣い”などのノン・バーバルな部分も評価に加えています。
面接でのガクチカはどう評価する?
Q. 面接において「学生時代頑張った経験(ガクチカ)」については、どのような評価をしていますか?
面接の中では、学生時代の経験からどんな学び・気づきを得たのかという話を、結果ではなくプロセスの中での学びや成長を聞きたいと思っています。
私、個人としては、「バイト・サークル・部活動」に加えて、「学業・ゼミ活動・ボランティア・課外活動等への取り組み」を必ず聞いています。
学業やゼミを通して答えのないテーマに向き合う中で、どんな着眼点・着想をもって、ゴールまで粘り強く取り組めたか。プロセスにおいて、どのように工夫し、他者を巻き込めたか。これは仕事においても求められるとても大切な発揮能力だと思います。
Q. 具体的に、評価が高かった学生の例はありますか?
正直、学業やゼミ活動の質問をすると止まってしまう学生が多いんです…。ただ、大学院生で理系の研究をしている就活生の方は印象に残っています。
研究室内での研究にとどまらず、インタビューに出向くなど、主体的に「答えのない問い」と向き合い、日本で初めてとなる論文を発表するために奮闘している方でした。
「答えのない問い」に向き合う中で、人間的にどう成長できたのか、ぜひ自分の言葉で説明してほしいなと思っています…。
Q. 面接の中では、イントラパーソナル・ダイバーシティ(個人の中の多様性)を掘り下げていくということですが、どんな質問をされていますか?
対人関係の中での経験を質問するようにしています。そこから学んだことや自身の“強み”をどのように認識しているかを探っています。
多様な人との関わり合いの中で「一人で解決するには困難な経験をしているのか?」 「その経験の中で人とのコミュニケーションストレスをどのように乗り越えたか?」 「それがご自身のパーソナリティにどのように影響し、何が自分の強みだと思っているか?」様々な角度の質問から、学生の個性を探っています。
志望動機においても多様性が大切。
Q. 「志望動機」は企業に自分を合わせてくる学生も多いと思います。「志望動機」って必要だと思いますか?
「志望動機」は必ず聞くようにしています。
理想は、弊社のミッション・ビジョン・バリューと就活生ご自身の人生観・生き方がリンクしていることですね。
経営理念と志望動機が繋がっていると非常に引き込まれますというのは事実ですが、実際には「ワコールの商品が好きだから」「会社として安定しているから」「女性が働きやすそうな職場だから」など、多様な観点からも評価はしています。
多様な人材に入社してもらいたいという点でも、「ワコール大好き!」という人材も必要だと思っています。
あとは、志望理由が本音かどうかって、面接官はわかりますからね。飾らずに素直に伝えてほしいなという想いがあります。
一緒に働きたい人の共通点は○○
Q. 多様な人材を獲得するにあたって、様々な観点で質問をした上で、どのように評価をしていますか?
弊社では、「志望動機」「ガクチカ」「入社してどんなことを実現したいか」などの質問項目を、すべてフラットに評価しているんです。総合評価で選考の合否を決めるので、「この1つの項目が抜群によかった!」というだけでは通りません。
それぞれの選考に携わる面接官は「この人と働きたい!と思うか?」という観点と、「目の前の就活生がワコールに入社して、長期的に幸せなキャリアを描いていけるか?」という観点の2つを大切にしていると思います。半分は親心のようなものですね…
Q. 「この人と一緒に働きたい!」と思う就活生の共通点はありますか?
変化、イノベーションに“ワクワク”してくれそうな人です。
ワコールグループは、毎年「コーポレートスローガン」が発信されるのですが、本年度(2020)のテーマは、「未来を創造するために、さあ、私たちは何をする?」です。
※2019年度は「変えよう。」 、2018年度は「出る杭になれ!」、2017年度は「やめる勇気、はじめる覚悟」
経営陣は、一貫して「変えることに対してポジティブになれ!」と全社員に向けて発信しています。毎年、言葉を変えて投げかけています。それはつまり、経営陣が社員に期待している変化を、まだ起こせていないからではと感じています。そういう意味でも、変化を楽しめる人は会社として必要な人材です。
通年採用時代の就活の変化
Q. 就活の仕組みが変わる中で、新卒採用をする意味はどのようにとらえられていますか?
弊社でも、春採用と秋採用(主に海外向け)に分けて選考が行われていますし、これからは通年採用に伴い、選考方法も多様化すると思います。
また、採用タイミングもより柔軟になり、入社時期だけ揃えるといった形に変わるかもしれません。それでも、新卒を採用する意義は、創業者の思い、経営理念を深く理解し体現できる人になってもらいたいという期待からです。
私自身、ワコールに新入社員として入社後、外資系企業に転職して再びワコールに戻ってきましたが、ビジネスパーソンとしてのベースができるのは1社目だなと身をもって感じています。新卒で入社した会社で「働く楽しさ」を実感したからこそ、これまでの15年間、キャリアに対して前向きに主体的に向き合えたのだと感じています。
ハタチ世代へのアドバイス
Q. 就活に向けて、学生時代にやっておくべきことはありますか?
バイトや部活をはじめ、ある一定の枠組みが定められた中での成長だけでは勿体ないと思っています。
ゼミや学業を通して、「答えのない問いについて粘り強く向き合い、他の人を巻き込む経験」を積んでもらえればと考えています。その経験を通じて、最終的には“自分ならではの強み”を発見し、自分に自信を持って面接に挑んでいただければと思います。
編集後記
学業、ゼミ、地域貢献、課外活動等が面接において重要な評価指標になるという事実から、「そこまで語ることあるかな…」と感じた方もいらっしゃったのではないでしょうか?
しかし、本来の「大学の目的」に沿って、学業に専念していれば、就活対策は必要ないという意味でもあると思います。
サークル、アルバイト、部活動、インターンさまざまな選択肢に溢れる大学生活ではありますが、残りの大学生活における“学業・ゼミ活動の位置付け”について考えてみる機会になれば幸いです。