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『さよなら、就活対策』
「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白"
今回は、クルーズ(株)の採用責任者、松岡さんにお話を伺いました。ファッション通販サイトSHOPLIST.com by CROOZ(以下、SHOPLIST)を中心に幅広くビジネス展開するクルーズですが、内定後/入社後のミスマッチを防ぐためのこだわりがあるようです。
意外と知られていない、企業説明会での話の聞き方のコツや面接のリアルを語っていただきました。
これからの大学生活や就活におけるヒントを探っていきましょう!
常に時代やユーザーの変化に合わせて幅広くビジネスを展開し続けている。
“事実”と“解釈”を分けよ!意外と知らない企業説明会の罠
Q. 就活の仕組みが変化する中、新卒採用で拘っているポイントはありますか?
「事実に基づいて、情報を正しく伝える」ということを大事にしています。
情報を発信する人事側としては会社の事実である情報を伝えて、聞き手側である学生がその事実ベースの話から「この会社が良さそう/違うな」「自分に合う/合わない」を、解釈して判断していただけるように心がけています。
例えば、「若いうちから裁量権があります」「若手が活躍しています」という話があるとすると、“裁量権”という定義や基準値を伝えたうえで自社の事例を話すようにしています。
自社を良く魅せようと人事の解釈(=事実に対して感じたこと)で学生に自社のことを伝えると、事実と異なったまま情報がいってしまい、学生との期待値に乖離を生むことがあります。それが入社後のギャップに繋がるということがよく起こっているんですよね。
一人ひとり、やりたい仕事や活躍パターンが違うはずなのに、人事からの情報を受けて「そういう環境が望ましいんだ」とおおざっぱに捉えてしまい、結果として就活の軸が抽象度の高いままそれっぽくなってしまうことがよくあるんです。
「裁量権が大きい」の勘違い?!裁量権の正しい捉え方
Q.確かに就活の軸がそれっぽくなることってありますよね…松岡さんが事実ベースで伝えられるときは、具体的にどのように伝えているんですか?
まず、決算資料にある情報や制度の事実情報をもとに、そのままの情報で会社説明資料をつくります。裁量権の話でいえば、「裁量権とは、“何を決められる人間か”」であるという定義から伝えていて、それに対して弊社がどうなのかを伝えています。
例えば、メンバーは、自分自身の目標や行動内容について意思決定ができる。
リーダーになるとメンバーの行動に対してFBや指示を出したりできる。
部長やマネージャーは、部署として戦術・戦略に対しての意思決定ができる。
これは一例で、肩書きにおける裁量は組織によって違ってきます。
あくまで肩書きは役割の一つでしかないので、肩書き=裁量ではないんですよね。
「意見を言える」ということと「意思決定できる・実行できる」ことは、別の問題だと思うので、実際の役職に具体的に落としこみながらお話をしています。
それでも解釈を伝える場面はあるので、その時は「これは個人的な考えで、受け取り方は任せる」と伝えたうえで、解釈の裏にある事実をセットで話すようにしています。
無理やり定量化はNG。落ちないESとは?
Q.履歴書やエントリーシート(以下ES)においては、どのような軸で評価されていますか?
主に「質問の意図を汲み取った回答かどうか」と「伝えたいことが明確か」をみています。
そもそも、各社のおこなう選考には大きく2種類あって、1つは最低ラインの基準(いわゆる足切り)を設けて、それ以上の人全員合格とするスクリーニングのケース、もう1つは一本釣りのようなその人個人に対してジャッチするケース。ESは基本的に1つ目のスクリーニングの場合がほとんどです。
スクリーニングで落ちてしまう場合は、「質問の意図を汲み取れていない」か「相手に伝えたいことが伝わっていないか」のどちらかが理由だと思います。
ESを書くときに、「定量化・数値化が大事」とよく色々なところで言われますが、個人的には「なぜ数字に置き換えたほうがいいのか」を考えてほしいですね。
例えば、1日10時間勉強することを「頑張る」とする人もいれば、1日1時間毎日続けることを「頑張る」とする人もいる。「頑張る」って一言でいっても実は程度が異なっていて、でも、「1」は誰が見ても「1」でしかなくて、同じ尺度で判断できるから、人の解釈のずれが起きづらくなる。
だから数値化は、自分の伝えたいことややってきたことを正しく伝える上での一手段に過ぎないというところの理解が必要なんですよね。なぜ数字に置き換えた方がいいのか?を理解して使っていないと、無理やり定量的に書いた数字だらけのESになってしまっていることがよくあります。
最近はSNSやChatGPT、ESを公開するサービスなど、ESを書くにあたってサービスもたくさん増えてきているので、活用できるなら何だって活用していいと思う派ですが、もちろんその表面的な部分だけを真似るだけでは評価はできません。
例えばESを公開するサービスだったら、そのESがなぜ通過したのかを分析する方がよっぽど大事です。「質問の意図を汲み取った回答かどうか?」つまり、「企業側がききたいポイントは何か?」の背景まで考えられているかは意外とみられています。
面接ではここを確認!ガクチカ評価3つのポイント
Q.次に面接についてお伺いしたいですが、ガクチカの評価ポイントはどこに置いていますか?
弊社のガクチカの定義は、「まだ持っていなくて今後得たいもの(勝つこと/承認欲求/お金など)に対し、時間と労力をかけたこと」です。
以下4つの観点で学生時代に頑張ったことを聞いています。
・どのくらいの時間や労力を使ったのか?(努力量)
・どんな課題にぶつかってどうやり切ったのか?(課題と解決策)
・どんな結果で、どんな変化があったのか?(学んだこと)
上記の項目から評価しているポイントは、1,目標設定の基準、2,原動力、3,再現性の3つです。
1,目標設定の基準
「どんな山を登ろうとしている?」という話です。例えばテストで30点をとった時に、「まずは赤点を脱出したいから50点を目指そうとする人」と「やるならとことん1番を目指し100点を取ろうとする人」がいたとします。
50点取ろうとしたら90点とることってほぼなくて、よくて60点ですよね。
当たり前な話かもしれませんが、現状と理想に乖離が大きければ大きいほど、つまり50点を目標に置く人より100点を目標において取り組む人のほうが、時間も労力もかけると思います。
要は、自分の手の届きそうなラインで目標を決めるのか、 ちょっと伸びして届く範囲で目標を設定するのか?どんな視座で、どんな基準値をおくのか?を見るのが1つ目です。
ーなるほど。目指している基準値の高さが評価ポイントの1つになるのですね。
そうですね。ただ、結局目標自体は言うことだけっていうのは誰でもできるので、目標に対してどのくらいの時間や労力を使ったのか?といった努力量も含めてみています。
2,原動力
「なんで頑張れたんだっけ?」「自分が積んでるエンジンは何か?」といった自分を突き動かす原動力について伺っています。
「実現したい世界観があるから」とビジョンを掲げて頑張る人もいれば、「達成の可能性が見えたから」と頑張る人もいれば、「やらないとやばいから」という焦燥感・危機感で頑張る人もいれば、「何をやるか?より誰とやるか」が重要な人もいる。
その頑張る源って人それぞれですよね。それは何か?ということと、それを認知しているかどうかが大事かなと思います。
3,再現性
ガクチカの1つの経験だけが光っているというケースもあるので、もう1つ似たような経験を聞きます。偶然の1回の過大評価にならないように、その経験だけでなく、社会に出ても再現性をもった特性なのかを聞いています。
記憶に残っているのは、甲子園を目指した野球部の方の経験です。小学生の頃テレビで見たことがきっかけで甲子園を目指し始めた方で、弱小校から甲子園を目指すために甲子園常連の高校へ毎週のように偵察へ行ったそうです。
「なぜ甲子園に行けたのか?」「どんな練習をしてるのか?」を徹底的に持ち帰って、チームで実践し、練習の効率化を行いながら限られた時間で試行錯誤した経験を語っていました。
結果的には、県大会決勝戦で負けてあと一歩で逃してしまったのですが、そこで満足せず、大学で全国を目指して結果的に神宮に出場したそうです。
Q.この方の原動力は何だったんですか?
「自分で決めたことは絶対達成したい」と言ってました。自分が描いたことに対してやり切ることが彼のエネルギー源だったのだと思います。意志決定は全部自分なんです。だから強い。自分で決めたことはちゃんとやり切るみたいなタイプなんですね。
Q.なるほど…!他に印象に残っているガクチカはありますか?
あとは、学問で経済学部の方の研究のガクチカも印象に残っていますね。その方は、目指している基準値の高さと行動量を評価しました。様々な視点の論文を読むだけでなく、フィールドワーク、ユーザーインタビューと分析…探求するうえでの情報収集の手段と行動量、検証スピードに驚かされました。
弊社で活躍している人の共通項としても、「行動量」と「やり切る力」が挙げられます。
裏づけされた量があるから、質が上がってくるという考え方です。特に学生や若いうちはチャンネル問わず、情報をどれだけ数多く集めきったかという行動量は大事だと思います。
志望動機<どんな欲望を持っているか?
Q.続いて、志望動機についてお伺いします。そもそも、志望動機って評価してますか?
弊社では面接でも、ESでも聞いてないですね。理由は「御社が第一志望」って言ってくることがほとんどだからです(笑)
本当に思っていようが思ってなかろうが、内定を取っていない状態で考えるなら、「御社が第一志望です」っていうのが"人の性"かなと思います。
そのため、志望動機に近しい話したいのですが、その人の働く先にある「欲求」を聞いています。もっと言えば就活の軸よりも「欲」や、「何をしてる時が幸せなのか?」について考えていってほしいな思っています。
働く=価値提供としたとき、「社会に対して何したい?」って正直なかなか出てこないと思うんですよね。自分(何をしてる時が幸せなのか?)→周囲(周りの人に価値・影響を与えられてることとは?)→社会(社会に対して何したい?)の順で広がっていく人が大多数だと考えています。
そもそも自分もまだ満たされていないのに、いきなり社会に何を提供したい?って言われても「わからん」ですよ。まずは、自分の「欲」や「何してる時が幸せなのか?」に対して、素直になってみてほしいなって思います。
ハタチ世代に伝えたいこと
Q.最後に、就活が本格化する前にやっておくべきことがあれば教えてください!
「時間の密度を変える」ことが重要だと思います。24時間の時間はみな平等にあるなかで、今ある時間をどう過ごすか?を考えられるといいですよね。
「時間をただただ、なんとなく過ごす」を変えるってのは大事だと思います。
経験自体は正直、アルバイト/長期インターン/学業、何だっていいといいますが何か一つ、と言われたら「自分の提供価値でお金を稼ぐ経験」と伝えています。
働く“時間”に対してお金が払われる仕組みのアルバイトがほとんどだと思うのですが、いわゆる歩合制や成果報酬と言われるような“自分が動いた価値”によって給与を得る経験ができるといいと思います。
編集後記
「ガクチカは数値で書くべし」「御社が第一志望というべし」世の中に溢れる就活の掟と言われるものがあります。
当たり前にあるルールや常識に「なぜそうなのか」本質を考えることができていますか?
「本質を問う」ことは、就活だけでなく、社会へ出てからも必要な習慣です。
新卒1年目から人事職を担い、様々な現場をみてきた経験から語られる松岡さんの言葉に、ハッと気付かされることも多くありました。
「人事の話にも、人事本人の解釈が混ざっている可能性がある」ということは、多くの学生が知らずに通り過ぎている事実です。就活に限らず、みなさんが知らない人事の裏側はまだまだあるかもしれません。
ある情報を鵜呑みにせず、学生時代から本質を問う習慣をつけられるといいですね!