大手人材企業パソナの面接官が語る、人材業界のこれからと就活。

『さよなら、就活対策』

「貴重な4年間を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない 「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白" 

今回はインタビューしたのは人材業界大手のパソナグループ採用担当の岩佐さんと髙橋さんです。転職が当たり前になっている昨今、働き方・働くにまつわる課題も増えてきています。今や9兆円の市場を持つ人材業界。人気も高い人材業界の今後と、人材企業の違いの見極め方、その中でのパソナらしさについても熱く語っていただきました。

会社プロフィール:「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、働きたいと願う誰もが安心して働けるよう幾重ものインフラをつくる事業を展開。また、その人らしい豊かな人生設計を描くお手伝いをする”ライフプロデュース”をすることこそが、パソナグループの仕事になります。

人材業界の動向を語る

Q. 最近の人材業界の状況の変化について教えてください。

岩佐さん:少子高齢化、労働者人口が減少する中で、「どのように質を高め、量を担保していくか」ということが企業の課題になってきています。そこに比例して、人を扱う人材業界は縮小していくのでは?という見方もあります。

しかし、別の見方をすると、働く人材が減ることによる課題を抱える企業が増えてくる中で、一人ひとりの生産性・価値をあげていく必要があるということにもなります。

髙橋さん:これからの日本は、人が“原石”から“ダイヤモンド”に変わっていくことが求められる時代だと思うんです。つまり、“原石”を磨かないと価値が高まらないということですね。

これからの日本だからこそ、その課題解決ができる人材業界の意義は大きいし、とても期待できる業界だと思っています。

 

人材業界でのパソナらしさ?

Q. 人材業界っていろんな会社があると思いますが、パソナさんらしさを言語化すると・・・カラーってありますか?

高橋さん:弊社は、「人のために何かをすることが好きな人」が多いです。人材業界でみると、正直、ビジネスモデルはどこの会社も変わらないんです。

「理念」「雰囲気」「人」「言葉選び」「人との向き合い方」ここが色濃く違ってきます。なので、人材業界で見ている人は、説明会や面談の中で、そういうところをみて他社と比較してみてねと伝えています。

その企業を象徴するようなキーワードを集めてみても面白いと思いますね。

岩佐さん:「自分がどうなりたいか」ではなく「何をすべきか」が軸にある会社です。

髙橋が言っていたキーワードで言うと「思いやり」「お人よし」「温かい」「チャレンジ」といった感じですかね。

弊社は、働く人に寄り添った行動選択をしている会社なんです。不景気になったとき、求職者の方々の賃下げが起きたことがありました。そのとき、多くの人材企業が賃下げを実施している中、賃下げに応じなかったという歴史があります。

また、求職者とのコミュニケーションに関しても、電話1本でやっている会社が多い中で、パソナは基本的に対面でのコミュニケーションを大切にしています。「人のキャリアと向き合うということ」を大切にしているからです。

ある種、非効率には見えるかもしれないので、それが合わないという人はいるかもしれません。会社なので、もちろん利益を獲得することは必要ですが、それは、次の社会課題のリソースを獲得するための利益獲得という考え方の会社です。

 

大手人材企業パソナが掲げる「学生に寄り添う採用」とは?

Q. 就活の仕組みも変化する中、どんなことに拘って新卒採用の活動を進めていますか?

髙橋さん:弊社の選考は、学生に寄り添って進めていくスタイルというのが特徴です。新卒採用のビジョンとしては、会社の想いと個人の想いをつなげる採用を行っており、エントリーの段階でフィルターをかけていません。

Q. パソナさんで求められている人材ってどんな人材ですか?

岩佐さん:求める学生としては「様々なキャリアを築いていこうと思える方」「フレキシブルなキャリアを楽しめる方」です。

弊社の配属は、人材・地方・女性活躍など様々な分野のグループ会社90社ある中から決まっていくのが特徴で、かつ面白いところです。その様々なキャリアを楽しめる方に来ていただきたいと思っています。

 

ガクチカは“for you”が大切

Q. 模範解答のような似た「ガクチカ」も多いと思いますが…「ガクチカ」については、御社ではどのようなポイントを注力して評価していますか?

髙橋さん:質問内容は事前に伝えるようにしていて2次選考の面談の中で、①学生時代頑張ったこと②自分の強みを社会に出てどう活かしていきたいか③その他、自己PRを聞いています。

経験の大小ではなく、その中で何を得たかその中でどんなことを大切にしたかをお聞きして評価しています。

岩佐さん:学歴などは関係なく、その環境でどう動いてきたかを重視しています。

内容は、長期インターンシップや留学などの特別なことはしていなくても、「日々友達とこんな風に向き合っています」でもOKです。

その方の素が見え、軸がみえるエピソードを聞くことができればいいなと思っています。

Q. 過去どのような学生の経験や軸を評価したのですか?

髙橋さん:ベクトルが外に向いているかどうかですね。一概には言えませんが・・例えば、「成長したい」というその意欲の理由が、「自分が成長したいから」という方より「周りに貢献したかったから」とか、「誰かのために頑張っていたら、結果的にこんな成長があった」というような方が選考を進んでいると思います。

岩佐さん:そうですね。自分の成長が目的にしているのではなく、その先の誰のため?「for me」ではなく「for you」を大切にできる方は評価が高いかもしれません。

社員の中でも、「やるべきものに対してやった結果の成長が大切」というスタンスを持っている人が多いです。会社の「for 利益」ではないというスタンスと同じような感覚ですかね。

Q. 御社ならではの拘ってきいている質問はありますか?

髙橋さん:先ほど、質問内容は事前に伝えるとお話しましたが、そうではない準備していない質問も意図的に聞くようにしています。例えば、「周りの人からどんなキャラクターと言われますか?」と聞きますね。

暗記した解答ではなく、トリッキーな質問をしたときの自然な表情や言葉からその方らしさがみえてきますからね。個人的には、そういったコミュニケーションで見える部分も大切だなと思っています。

 

志望動機の評価ポイント

Q. 「志望動機」については、御社ではどのようなポイントを注力して評価していますか?

髙橋さん:志望動機は聞くようにしています。まずは、「なぜパソナなのか」という質問ではなく、「なぜ人材業界を見始めたのか」その理由をききます。

先ほど「パソナらしさ」の話でもあがったように、人材業界として企業ごとに色がわかれている分、その理由には“人”や“理念”にその会社らしさが現れると思うんです。

もちろん業界で絞っていない方や「地方創生」という入り口の方、“パソナ”単体としてみてくれている方もたくさんいるので、その場合にも「なぜその軸を選んだのか」を聞いています。

正直、「何をやりたいか」が明確に決まっている子はパソナじゃない方がいいと思うんですよね。弊社のキャリアは幅広い選択肢がありますし、人材業界に拘っている会社でもありません。いろんなチャレンジができるという方のほうが楽しく働けるという前提から志望動機を掘り下げています。

岩佐さん:個人的には、未来と過去を志望動機に変えて言える人が少ないなという印象があります。

未来に対してやりたいこと“WILL”を持っている就活生が多いなと思っていて、それってすごく素晴らしいことですよね。これに加えて、過去の経験から自分は何ができるか“CAN”の部分も考えられるといいのではないかと思います。

立派な“WILL”はあるけれども、“CAN”の部分が分からない人が多いんです。これができると思うと言い切れなくても、できると思うでいいんです。志望動機の部分では、“WILL”と“CAN”の話を聞けるといいなと思っています。 

 

3年以内の転職ってあり?

Q. キャリアの作り方が変化している中で「3年以内に転職をすると・・」みたいな風潮もありますが、人材業界の人事として本音を聞かせてください。

岩佐さん:転職理由がスキルアップということであればチャレンジ精神があっていいなと思います。実際データでみると転職理由は「給与が低い」「自分が思っていた仕事と違う」「希望のポジションではなかった」ネガティブな理由が多いんです。この業界に長くいる中で3年目未満の転職理由がもったいないなと感じます。

人事部長の話で、「ジクソーバズルの理論」という話があるのですが・・・ジグソーパズルって完成させるために全然関係ない端から地道に埋めていくんですよね。

何だかよくわからないところから、一つひとつピースを集めていって、段々とやりたいことが見えていく。部活動などと一緒でやっていったらうまくなるし、うまくなったら楽しい!と感じるものです。

最初はどうかな?と思っても慣れてきたら楽しくなってくる、っていうことももちろんある。そのイメージを持てるといいなと思います。

 

髙橋さん:「将来の目標がない・・」という方にこそ伝えたいのですが、「いろんなキャリアの描き方があるから、他人と比べる必要はない」。自分がどうありたいかの方が大切だと思っています。

キャリア形成における考え方として、【山登り型】目標に向かってゴールから逆算してキャリアをつくる【川下り型】置かれた環境に準じて最後海にいきつくような目標を見つけながらキャリアをつくるというような考え方があります。

働く環境を変えることも一つですが、環境に依存せず、目標を見つけて次の川、山、次の海が見つけていけばいいと思うんです。

目の前のことを一生懸命やることによって、やりたいことや次の目標は広がっていくと思います。ひとつの環境で、「これを得た」と思うものを持って次のステップに行くことがいいのではないかと思います。

 

大学は“お金”よりも“時間”

Q. 就活やその先を見据えて、学生時代にやっておくべきことは?

髙橋さん:自分の好きなことにつぎ込むことが大事だと思います。
人生のゴールデンウィークと言われる学生時代‥「お金」じゃなくて「時間」という財産をどう使うか考えて過ごしていけるといいと思います。好きなことに取り組んでいたら「学生時代こうしておけばよかったな・・」ってあんまり出てこないと思うんです。

自分自身、学生時代にアカペラをやっていて、今も好きで続けています。好きなことにとことん取り組んだということを感じているので後悔はありません。

岩佐さん:そうですね。社会人になったらお金はもらえます。ただ、時間の拘束をされてしまう。1年にまとめて休みをとれるのは、10日程度になるというのが現実です。

就活がどうこう、ではなくやりたいと思えることをとことん突き詰めてやってみてほしいです!

 

編集後記

「数ある企業の中で、なぜ弊社なのですか?」エントリーシートや面接の中でよく聞かれる志望動機。企業に合わせた志望動機をつくることに疲弊している就活生をよく見かけます。

頭を悩ませてやっと完成したその志望動機が、将来の自分を苦しめているかもしれません。今回パソナの方に語っていただいたように、ビジネスモデルは大きく差異がない業界は多数存在します。その中で違いを見つけるキーワードを見つけること、企業に合わせて自分の志望を変えるのではなく自分のビジョンと重なる企業を見つけることが大切です。

業界や企業情報を収集して意思決定をするのは、あなた自身。将来を決めるのは、あなた自身の行動です!ぜひ、自分らしいキャリア選択を!