『さよなら、就活対策』
「貴重な4年間を“就活対策”で、消耗していませんか?」
誰も教えてくれない 「面接の裏側」 を紐解き、これからの大学生活を問い直す "面接官の告白"
今回は流通・小売業界の中で通信販売事業を仕掛けるDINOS CORPORATIONで採用を担当している安藤さんにお話を聞いてきました。面接での生々しい評価に対する考え以外にも、就活までの時間の使い方や大学生活へのアドバイスも伺ってきました。大学生活や就活の参考にご一読ください。
面接での拘りの質問とは?
Q. 就活の仕組みも変化する中、学生と接するにあたって面接官として何を大切にしていますか?
「当社と学生、お互いのフィット感」を大切にしています。面接に来た学生が当社に合うかどうか、当社が判断するだけではなく、面接を通して学生自身にも考えてもらえればと思います。
面接や選考は短時間ですから…。会社選びの判断材料にしてもらうために、いろいろな社員と出会う機会を増やしています。できるだけ、選考中や面接中でも社内の自然な雰囲気を出すように心掛け、説明会では各部署から社員を呼んだり、面接の待合室に社員を呼び座談会を開いたり、話す時間を作っています。
最終的には、社員の生の声を聞いて「当社が良いのか?」学生自身に判断して欲しいと考えています。
Q. DINOS CORPORATIONならではのこだわりの質問はありますか?
当社では「モノがたりで、くらし、たのしく。」をビジョンに掲げています。お客様には、商品が生まれる背景、商品が持つストーリーまで届けて、商品の存在を楽しんでほしいと思っています。
そのような当社ですから、学生自身の“モノがたり”に興味があります。自分が好きだと感じること、逆に悔しかったことなど、学生の気持ちが伝わってくるようなエピソードなど、特にこだわって質問しているかもしれませんね。
自由度の高いガクチカの評価
Q.「ガクチカ」については、どのように評価していますか?
「学生時代に大事にしてきたこと」を具体的な言葉で表現できると高評価になると思います。
「学生の価値観が当社に合うかどうか?」を知りたいと思っているので、内容は「遊び」でも「アルバイト」でも大丈夫です。
Q.「ガクチカがない」という学生も多いと思いますが、具体的な言葉から何をポイントに見ていますか?
「ガクチカ」から、こちらが知りたいことは「再現性」です。入社後、学生時代と同じような行動ができるかどうかをポイントに見ています。たとえば、失敗したエピソードでも、そのときどのように乗り越えたのかを話してくれると、入社後、壁にぶちあたったとき、どのような行動を起すのかイメージしやすくなります。
「○○で優勝した」「○○サークルの部長でした」というようなエピソードがあっても、実はピンとこなくて…
ガクチカがない場合でも、経験の中で「自分を変えるために○○をした」「○○を工夫した」など、自分から何をしたのか、どんな感情を持っているのか、話してくれれば大丈夫です。学生が当社で働くイメージが湧きやすくなると、採用したいと思いますね。
Q. では、具体的に印象に残った「ガクチカ」はありますか?
他社様の長期インターンシップで「YouTubeの再生回数を増やす」というガクチカがありましたね。目標達成はできなかったけれど、そのとき悩んだ出来事、問題をどのように乗り越えたかなどが具体的にエントリーシートに書いてあり、その学生らしさが伝わりました。
大学のサークル活動で「地元の農産物のPRをした」というガクチカもありました。みかん農家さんと協力して、ふるさと納税の返礼品にしたなど、内容が面白いこと以上に、自分が起した行動や感情に、その学生のパワーを感じて印象に残りましたね。
志望動機に“やりたい”は危険?
Q.「志望動機」について、どのように評価していますか?
志望動機の質問はしますが、あまり重視していません。
ただ…、「学生が大事にしていること」「学生が好きなこと」を志望動機に入れて、それを活かせそうな会社が当社であるというような内容だと説得力がありますね。自分らしさをしっかり持ちつつ、その学生の個性が見えてくるような気がします。
逆に、限定的に「入社したら絶対○○やりたい」とだけアピールされると、当社ではその環境を準備することができない場合もありますし、〇〇に特化した仕事がある他の会社へ入社した方が幸せになれるのでは…と考えてしまいますね。
もし「○○がやりたい」という気持ちがあるなら、「どうして○○をやりたいのか」「なぜそう思ったのか」一歩踏み込んで話して欲しいです。そうすると、当社側もそんな想いがあるなら、こういう仕事も面白くかんじてくれるかも?と幅広く学生の可能性を考えることができます。
Q. 面接を繰り返す中、評価が難しいなと思うのは、どんなときでしょうか?
模範解答のような、マニュアル通りの返答ですね。マニュアル通りの返答は、キレイな話ではありますが、あまり印象に残りません。学生らしさが見えないと勿体ないですね。
たとえば、アルバイトをして「◯年続けました。」と伝えるより、「こんなやりがいがあった」や「○○な出来事が嬉しかった/辛かったけどこう乗り越えた」等、アルバイトをしている時の感情も含め、実体験からアピールできると良いですね。アルバイトをしている時の学生の姿がイメージでき、面接中でも会話が膨らむ気がします。
面接は苦手だなと感じる方は、オンラインも含め、インターンシップに参加しておくと、会社の雰囲気を含めて知ることができるので、学生自身にも余裕が生まれるのではないでしょうか?面接時の緊張度が違うと思いますよ。
就活までの時間の使い方は?
Q. 大学1年生や2年生に向けて、学生時代にやっておくべきことは?
「今、あなたが一番頑張っているものは何?」と聞かれたとき、何かしら答えられることがあると良いですね。
「遊び」でも良いと思いますよ。遊ぶためには、お金もパワーも必要なので、「遊ぶためにどういう行動をしたか?」「どんな遊びなのか?」「何がそんなに楽しいのか?」、胸を張って言えるようにしておくと、将来、自分の自信になると思います。
Q. 就活に向けて、何かアドバイスはありますか?
日常生活から「乱暴な言葉を使っていないか?」、相手からの見え方を意識して欲しいですね。
面接中の学生は、話す内容ばかり気を取られて、素の自分が出やすいものです。焦ってくると友達と話すような言葉遣いになってしまったり、使い慣れない敬語に緊張して、本当に言いたいことが言えなくなってしまう学生もいます。
「すぐに直そう!」と思ってすぐ身に付くものではありませんので、挨拶やマナー等、今のうちから意識しておくと、面接で自分が伝えたいことに集中できると思いますよ。
編集後記
お互いのフィット感を大切にし面接を通して入社したいのか、学生自身に判断してほしいと話す安藤さんの姿が印象的でした。
一般的には、「会社の雰囲気」「社風」が自分に合うかどうか、という視点で会社選びをするように言われます。しかし、会社説明会でわかるのは、表面的なところまでです。学生が、本来の会社の雰囲気や社風まで深く理解するのは難しいでしょう。
そんなとき、頼りになるのは実際に働く社員です。きっと、その会社にはその会社らしい社員が、その部署にはその部署らしい社員が、いるはずです。インターンシップでも、選考中でも、面接中でも、社員一人ひとりに目を向けると、その人の生き方や魅力まで見えてきて、就職活動がより楽しいものになるかもしれません。