働く人で会社を決めるのは危険?マネーフォワード人事が語る、就活の志望動機において重視していることとは?

『さよなら、就活対策』

『企業に自分を合わせる就活はもう辞めよう!』をコンセプトに、優良企業の面接官の本音を紐解くインタビュー。

マネーフォワードの面接において、“書類や学歴でのふるい落としはない”というマネーフォワードの採用。大切なことは、「社会へ出てどんな価値提供をしたいのか」ということだそうです。

お金というフィールドで、急成長中のメガベンチャーであるマネーフォワードの採用担当者はどんなスタンスで面接に臨んでいるのか?具体的にカルチャーに合う人材をどのように見極めているのか?過去の評価例も含めて、赤裸々に語っていただきました。

会社プロフィール「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、“Fintech”という言葉が一般化する前の2012年に創業。個人の家計簿サービスや法人向け経理支援サービスを展開し、2017年にFintech企業として国内で初めて東証マザーズに上場。社員数800名を超える急成長中のメガベンチャー。
面接官プロフィール:菱沼 史宙(人事責任者):マネーフォワードは採用活動において「選考は見極めではなく、相互理解の場である」というポリシーを大切にしています。学生の皆さんにとって面接は緊張するかと思いますが、私たちはフェアな目線・立ち位置でお互いの価値観や志向性などをすり合わせる場として考えています。きっと今年度もzoomでお会いする機会も多くなると思いますが、服装もスーツでなくて構いませんし肩肘張らずざっくばらんにコミュニケーションがとれたらと思います。是非マネーフォワードのミッション、ビジョン、バリューの想いを感じ取って頂き、アツい話ができることを楽しみにしています!
■経歴
2003~2009年:人材業界にて求人メディアの制作・ディレクター・セールスを経験
2009~2011年:人材紹介エージェントでキャリアコンサルタント職
2011~2018年:小売・飲食業界にて人事マネージャー(採用/制度/組織開発)
2018年~   :マネーフォワードの人事。2020年5月より人事本部本部長
※10歳の娘がいます。走ること、泳ぐこと(海)、登ること(山)、ビール、料理が好きです。

コロナ禍での採用について

Q. 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、就活も変化する中、学生と接するにあたって何を大切にしていますか?

現在、新卒向けの説明会、その後の最終までの面接、さらに入社後のオンボーディングまで、すべてオンラインで実施しています。

その中でも、これまでと変わらない採用活動ができるように工夫しています。

その上で、マネーフォワードがオンライン面接の際に心がけていることは4つあります。

  1. 通信環境がなるべく整った状態で実施する
  2. 選考を受ける側のオンライン選考の習熟度を確認する
  3. 表情や感情がお互いに伝わりにくい分、当社側は意識して気持ちを表現するようにする
  4. オンラインだからこそ、選考を受けている方とMVVC(※)とのマッチングを大事にする

※Mission/Vision/Value/Cultureの略

その中でも、4の部分については強い想いがあります。

オンライン選考になったからと言って、私たちが掲げる「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションをともに実現したいと思っていただける方々と一緒に働きたいという想いは変わりません。

それをオンラインでどのように伝えるか、というプロセスを大切にしています。そこに、学歴という指標はありません。

 

ガクチカの評価とは?

Q. 「ガクチカ」については、御社ではどのようなポイントを注力して評価していますか?

コンピテンシー(行動特性)地頭をみています。

質問は、結構シンプルです。学生時代に問わず、人生22年間生きてきて、どこで自分の人格、価値観やキャラクターが形成されたかを問うています。

それが大学生活でなくてもいいと思っています。学生時の作られた話だけよりも、「幼いときの家庭事情の話」「いじめられて復活した話」などのほうが、自分らしさが現れていて“聞きがい”があります。

出来事に対して「どのように考えて行動したか」を大切に、それを知れる時間にできるよう面接を行っています。

 

論理的思考力(地頭)の評価とは? 

Q. 地頭とありますが具体的にどんなもので、具体的にどのように評価されていますか?
 
「論理的思考力=情報収集・整理・優先順位をつけて打ち手を考えていく」というステップの中で、まずは適切に情報を集められるかどうかを見ています。

志望度が高くなくてもいいのですが、「会社のことを事前に調べているか」ということは気にしています。

かつ、みている情報が表層的なものではなく、「決算書・財務情報」「ウォンテッドリー」まで見た人は目を引きます。

最終的な段階では、自分が人生をかける会社だからこそ、決算や財務状況等について理解することは大切だと思います。その情報をふまえ自分の考えや意志を伝えてくれる学生は「自分で意思決定をしているな」「思考の幅と深さがあるな」という印象を抱きます。

 

Q. その他にも地頭を評価するポイントはありますか?

もう一つは、やりとりをしているレスポンスとして、スピードよく答えているか意図を捉えているかも見ています。

例えば、面接の中で『この業界になぜ興味もったのか?』の回答が、「日本の社会や経済が○○である」「日本のビジネスモデルが変化してきている」というような話ができる就活生は、入社してからも情報のキャッチアップが早いことが想定できます。

フィンテックという小難しい領域をどう捉えているかは、面接の中での"話しぶり"によって、伝わってくるものです。

 

志望動機はそもそも必要?

Q. 「志望動機」については企業に自分を合わせてくる学生も多いと思いますが、必要だと思いますか?

エントリー時や1次・2次面接では志望度はあまり問わないですが、最終的に志望動機は必要だと思います。

「なぜこの会社受けているのか」の理由がないと話が通じ合わないと考えているからです。

業界も幅広く見ているのはいいと思いますが、そこに動機や一貫性・軸があるのかを重要視しています。

 

会社選びの基準は、働く人よりも○○

Q. 「志望動機」については、御社ではどのようなポイントを注力して評価していますか?

やりたいことを問うてはいません。ただ、『社会に出てどんな価値を提供したいのか?』ということは問うています。

当社は特に“社会のお金の課題解決をしたい”と思っている会社なので仕事を選ぶ基準、働く場所を選ぶ理由に、何かしら「社会を良くしたい」という想いがないと合わないなと思っています。

よくある例として「一緒に働く人が大切」が1番の理由になる人は合わないなと感じています。

勿論、その気持ちも理解はできるのですが…「人が仮に辞めても、社会に提供したいものは何?」と考えられるか否かが大切ですね。不思議と内定者の傾向をみると「社会をこうしたい」という想いが強いです。

内定受諾から入社するまでの期間、人の出入りも勿論ありますし、従業員数が倍になっているとか、新しいグループ会社が立ち上がるとか、経営陣が入れ替わっているということも十分にあり得ます。

未来にどんな価値提供したいのかということにワクワクしていると、どんなことが起きても「面白い」と捉えられると思います。

 

Q. 具体的に、過去どのような志望動機を評価したのですか?

既存の事業への「このままじゃだめだ」というパッションが垣間見えると人事として、本物だなと思います。クロステックの世界ってある種既存の産業をより良くしていくために「テクノロジーで変えていくぞ!」という想いが強いですからね。

例えば「父親が本当に資金調達するのに悩んでいたこと、家族で食費を切りつめていたことから…今の銀行は簡単に手を差し伸べてくれないからどうにかしたい!」

そんな想いさえあれば、社長が変わろうが、先輩に意地悪されようが、簡単にはぶれないなと評価しています。

 

―原体験から、想いを語っていただけると印象深いですね…

確かに、この会社に興味を持っている理由とその原体験にリンクするものがあって、必然性があって弊社を受けたという想いを感じると非常に印象的です。

ミッション・ビジョン・バリューに惹かれてきましたといってくれる人は結構いるんですが、「それはなぜ?」という原体験があると評価に繋がります。

特にお金に苦労した、お金にまつわるエピソードが出てくるとすごく印象に残りますね。親が社長やっていて資金繰りに苦労した姿をみて考えたこととか、お手伝いしている中で会計ソフトを触っていてやってみたこととかだと面白いなぁと思います。

部活・サークルやっていた資金集めをしていた学生はその苦労をよく知っていますね。そんな話と弊社が掲げているものをリンクさせてくれると印象深いです。

 

ハタチ世代に伝えたいこと

Q. 最初のキャリア選択を迎える前の学生生活でやっておくべきことは?

体験を通じて「こうなったらいいなあ」を考える機会をたくさん作るといいと思います。

不便を感じる局面にたくさん触れ、違和感・問いをもつこと。それを手っ取り早く実践できるのが海外に行くことなのかもしれないですね。

短期間で文化や価値観、日常との違いを得られると「こっちのほうがいい!」ということを感じられると思います。

違う文化に触れると、日本に対して疑問をもつこと・違和感を感じること多くなるんでしょうね。

海外へ行かなくてもよいのですが「ずっと同じ環境にいるのはもったいない!」「自分ができなくても、ここがこうなれば社会ってこんな風によくなってくんじゃない?」と感じられる体験を積んでいくと良いと思いますね。

 

編集後記

世の中の多くの会社がミッション・ビジョン・バリューといった指針を掲げていますが、丁寧に育むための組織開発・採用を推進されている企業は非常に少ないのが現実です。

ここでは書ききれない程、ミッション・ビジョン・バリューへの拘りを感じたインタビューでした。

就活の視点では、志望動機という言葉の定義も、会社に合わせることが正解ではなく、シンプルに「社会に出て、どんな価値を提供したいのか?」という問いと向き合うという本質的なメッセージに大変共感しました。

学生時代に感じた違和感や問いと丁寧に向き合う経験と社会が結び付けられるかが重要になりそうですね。ぜひ、自分らしいキャリアをつくるための新たな経験を!